2023/02/10 20:14


1979年、高校3年の私はライヴに明け暮れた年でした。年明けから春にはキャメル、ジューダス、ストラングラーズ、リンダ・ロンシュタット、ジャパン、ロッド・スチュワート、ユートピア、ロキシーミュージック、ブルーオイスターカルト、UK,、イーグルス、スコーピオンズと月に数本ペースで外タレ(海外ミュージシャンの意味)を観に都下の福生から都内に通っておりました。

その合間を縫う様に、バウワウ、アン・ルイス、桑名晴子、RCサクセシション、ARBといった日本のアーティストも、いつ休むのと言うくらい観に行ってたのです。その中でも7月14日(土)のことは忘れもしません。名古屋から野獣(ノケモノと読みます)というバンドが初めて東京の大会場でライヴを行うので、早々にチケットを買っておりました。しかし、7月に入ったところで友人から「Charの復帰コンサートをどうやら野音でやるらしい!」という情報が入ってきました。しかも、7月14日で、フリーコンサートだという!観なきゃヤバい。けど、Wブッキングだ(笑)。

しかし、当時の私のロックに対するパワーはとてつもなく、何とかするゼと思っておりました(苦笑)。7月14日当日は確か小雨が降っていたと思います。日比谷野音に着いたのは昼過ぎだったと思いますが、フリーコンサートですから既にとてつもない人で日比谷公園はごった返しており、もちろん整理券など持っていない私(と友人)でしたが、何故だかあまり悲観していませんでした。夕方になると徐々に整理券を持った人が入場しはじめ、開演時間が迫ってきましたが、会場外にはまだとてつもない人が入場出来ずにいました。そこで私たちは野音の高い壁を乗り越えようと、高さの低いところを探し始めます(笑)案の定低いところを見つけ、3m近くあったと思われる壁をよじ登り入場します!!今では考えられないことですね。

会場に入ると既に演奏が始まっていて、会場の光景は当時の日本のライヴではありえないほどの観客の多さでした。当然、演奏する曲はすべて初めて耳にするJLC(Johnny,Louis&Charの略)の新曲であるのに、そのグルーヴはとてつもなく、3人から出てくる音とは思えないほど重厚であったと記憶しています。またその時、Charのギターのチューニングが雨の影響か時折狂っていくのが気になったのも覚えております。しかし、後半に差し掛かるとチケットを入手していた野獣のライヴのことが頭をよぎります(苦笑)。何の曲であったかは忘れましたが、残り数曲を残し私たちは野音を後にし、野獣のライブを観に日本青年館へと向かうのでした。この時の屈辱が後にJLCのライヴに行きまくるきっかけになった事は言うまでもありません。


野獣のライヴは当然素晴らしかったのですが、JLCへのライヴ熱は上がる一方でした。そしてJLCのツアーが始まったのはその年の秋で、前夜祭的なイベントとして1979年11月10日に神奈川大学オールナイトライヴも観に行きました。そのライヴには敬愛するカルメン・マキ、クリエイション、ジェームス・テイラーの実弟、リヴィングストン・テイラー等、じつに豪華な出演陣でした。本当にこの時期は充実していましたね!その後、JLCの野音での「FREE SPIRIT」はレコード化され、当然購入し聞きましたがCharのギターのチューニングが全く狂っていませんでした。その時は私の錯覚だったんだなと思いましたが、数十年後にオーバーダビングされていることを知り、納得したのでした。チューニングが狂っている臨場感溢れるヴァージョンは2004年に発売された完全版「FREE SPIRIT」BOXセットで聴くことが出来ます!

私は前職でイベントの企画制作をする仕事をしていましたが、2010年にある方のご紹介でジョニー吉長さんのドラム・クリニックを企画し、2010年9月に東名阪で開催することになりました。しかしこのイベントは今まで味わったことのないタイトロープな出来事や、中止になる可能性もあったドラム・クリニックでした(苦笑)しかし、いざクリニックツアーが始まるとその内容は大変素晴らしいものでした。まず、ジョニーさんはドラムチューニングを全く行わず、メーカーから送られてきたドラムセットをそのままの状態で叩きました。しかし叩き出されるサウンドは正にあのJLCサウンドだったのです。本当にシビレました!

また、ジョニーさんは私たちスタッフには「清水君、ケータリングには缶チューハイの500mℓを2本入れてよ~」と言ってきたり、最終日に私がサインをお願いすると「清水君に?照れるね~」とチャーミングな一面も見せてくれました。終わってみれば実に楽しいクリニックとなり、とても素晴らしい経験になったのです。


翌年の2011年夏、私の携帯に突然ジョニーさんから電話が入りました。「清水君、クリニックっていつだっけ?」と、、、私は少々戸惑いながら、予定はないですよと答えたら、「そうだっけ、ごめんナ~」と言って電話は切れました。少し酔っていらっしゃったのでその時は笑って終わったのでした。その1年後、マネージャーさんからジョニーさんが亡くなった事を知らされました。その時の電話のことをマネージャーさんに伝えたところ、「寂しかったんじゃないですかね~」と言われ、少しショックだったのを覚えております。そんなこともあり、2013年2月には「Johnny Yoshinaga Museum」と称して、ジョニーさんの使用していたドラムセットや衣装、写真の数々を展示したミュージアムも開催しました。1979年、FREE SPIRITのステージを観て熱狂していた高校生だった私、、、。30数年後、一緒に仕事ができるなんてとても光栄でした。ジョニーさん!今頃はそっちで加部さんとセッションしてますか!!(笑)


【JOHNNY,LOUIS&CHAR FREE SPIRIT】

1979年7月14日(土) 日比谷野外音楽堂

入場料:フリーコンサートのため無料