2023/05/12 14:59


1960年代後半、新しい音楽ムーブメントが多数生まれる中、1969年にあるバンドのデビューアルバムが、不動であったビートルズ人気を揺るがしました。そのアルバムこそがキング・クリムゾンの「クリムゾンキングの宮殿」です。このあたりから火が付いてきた音楽ムーヴメントこそが「プログレッシヴ・ロック(PROGRESSIVE ROCK) 」なのです。プログレッシヴと言う言葉は進歩的などと言う意味を持ちます。(以後、プログレ)そして、どのバンドにも共通している部分があります。まず曲に長尺のものが多い、そしてサウンドはクラシックやジャズに影響を受けている、歌詞が前衛的、変拍子が多い、アルバムジャケットが芸術的、バンド内でメンバーチェンジが多いなどいろいろです(苦笑)。

ブームの頂点であった1970~1975年くらいまでの間に頭角を現したバンドの中で、日本の音楽業界では「5大プログレバンド」などという言葉を使って、よく特集などを組んでいたものです。今回はまだプログレをあまり聞いたことのない方のために、解りやすい「5大プログレバンド」の説明をしていこうと思います。あくまでも個人的な見解や説明になりますので悪しからず(笑)。まずはこのバンドから!


◆5大バンド 其の壱 キング・クリムゾン(King Crimson)
中心人物であるロバート・フィリップによって1968年に結成されたバンドで、プログレバンドの中でも最も活動期間が長いのがこのバンド。バンドの音楽性が時代によって大きく変化しているのが特徴的で、メンバーチェンジもかなり頻繁でした。また、このバンドから後のプログレ界を牽引する事となるアーティスト(グレッグ・レイク、ジョン・ウェットン、ビル・ブラッフォード等)を多く送り出すことになります。曲調は静と動がハッキリしており、静の曲は悲しげでダークな雰囲気を出し、動の曲は激しく攻撃的でもあるので聞き飽きることがありません。また、演奏に即興演奏を多く用いているため、非常に長い尺の曲も存在します!なお、後期のべーシストである、ジョン・ウェットンは2017年に死去しています。本当に素晴らしい声の持ち主でしたね。

【必聴代表アルバム】
★ クリムゾンキングの宮殿(英題:In The Court Of The Crimson KIng)
★ レッド(英題:Red)
★ リザード(英題:Lizard)


5大バンド 其の弐 エマーソン、レイク&パーマー(EMERSON,LAKE&PALMAR)

1971年、ワイト島ポップフェスティバルで華々しくデビューしたスーパーバンド! プログレバンド、ナイスの中心人物であったキース・エマーソンクリムゾンでベース&ヴォーカルだったグレッグ・レイク、そしてアトミック・ルースターのドラマー、カール・パーマー3人で結成されたバンド。ギターレスでキーボードが中心のバンドで、主にクラシックに影響を受けた楽曲になっています。ワイト島のライヴではムソルグスキーの「展覧会の絵」をプログレ風にアレンジし演奏したことで話題沸騰となり、一気にスーパーバンドになります。曲調の基本はクラシックで、3人で出しているサウンドとは思えないくらい重厚、ステージでの演出が派手なのも最高です。また、バンドにMoogシンセサイザーを導入した初めてのバンドでもあるんです!ただ、クリムゾン同様、バンドメンバー3人のうち2人が死去しているのが実に残念です。

【必聴代表アルバム】
★ 恐怖の頭脳改革(英題:Brain Salad Surgery)
タルカス(英題:Tarkus)
展覧会の絵(Pictures At An Exhibition)


5大バンド 其の参 ジェネシス(GENESIS)

奇才ヴォーカリスト、ピーター・ガブリエルを中心に1969年に結成されましたが、クローズアップされるのは1970年初頭になります。バンドのスタイルが他のバンドと大きく違うのは、ガブリエルが演劇演出を加えながら歌うスタイルで、まさにブッ飛んでいるのです!唯一無二のスタイルで歌う姿はあっという間にバンドをブレイクさせます。曲調はクラシック、ジャズ、オペラなどあらゆる要素を混ぜ合わせたようなスタイルですが、曲展開は実にドラマチックな仕上がりになっています。ガブリエル脱退後は、ドラムのフィル・コリンズがヴォーカルをとり、ますますドラマチックになっていくのです。80年以降はサウンドが非常にポップになっていきます。なお、2022年にラストツアーを敢行し、バンドの活動に幕を下ろしました。私としては70年代後期までのジェネシスがプログレバンドだと思っています(苦笑)。

【必聴代表アルバム】
★ 月影の騎士(英題:Selling England By The Pound)
★ 眩惑のブロードウェイ(英題:The Lamb Lies Down On Broadway
★ 静寂の嵐(英題:Wind & Wutherng)

5大バンド 其の四 イエス(YES)

デビューは1969年であるがセカンドアルバム辺りまではプログレッシヴ・サウンドとはかけ離れていました。70年よりギタリストにスティーヴ・ハウを迎えてから一気にプログレサウンドに!サウンド面は明らかにクラシックから影響を受けており、起承転結がよく表れています。そして1971年、キーボードにリック・ウェイクマンが加わり一気に黄金期を迎えます。メンバー全員が超テクニック集団と言っても過言ではなく、バンド内のコーラス(ハーモニー)においては、プログレバンドの中では群を抜いていると思います。1972年初頭にオリジナル・ドラマーのビル・ブラッフォードはキング・クリムゾン参加のため、バンドを脱退しています。後任のアラン・ホワイトも素晴らしいドラマーでしたが2022年に死去、オリジナルメンバーであったベースのクリス・スクワイヤも2015年に死去しています。

【必聴代表アルバム】
★ 危機(英題:Close To The Edge)
★ こわれもの(英題:Fragile)
★ 海洋地形学の物語(英題:Tales From Topographic Oceans)


5大バンド 其の五 ピンク・フロイド(PINK FLOYD)

最後は私が一番敬愛するバンド、ピンク・フロイドです。デビューは1967年、オリジナルメンバーであるシド・バレットを中心としたバンドでしたが、プログレバンドではありませんでした。シドは薬物中毒で1968年に脱退。並行してギターにデヴィッド・ギルモアを加入させていましたが、シド脱退後はベースにロジャー・ウォータース、キーボードにリック・ライト、ドラムにニック・メイスンと言う不動のメンバーとなりました。転機は1970年発売のアルバム「原子心母」で一気にスターダムに駆け上がり、1973年に発売されたモンスターアルバム「狂気」は今でもチャートに入り込むアルバムとなりました。ギターサウンドはブルースが基本となっていて、変拍子は他のバンドに比べ多くありません。また、コンセプトアルバムを定着させたのもフロイドだと思います。2005年にリック・ライトが死去し、2014年に発売したアルバム「永遠」を最後にバンドは終焉を迎えました。

【必聴代表アルバム】
★狂気(英題:The Dark Side Of The Moon)
★ 炎(英題:Wish You Were Here)
★ おせっかい(英題:Meddle)


■■ 後記 ■■
もしかすると2000年代になって「プログレッシヴ・ロック」はもはや死語になってしまったのかもしれません(涙)。しかし、他のジャンルのバンドでもコンセプトアルバム起承転結のハッキリした曲などは、全てプログレからの影響が非常に大きいと思っています。また、バンドの話題になると、とかくギタリストがクローズアップされる事が多いですが、プログレの要はキーボードだと私は思っています。その重厚なサウンドのボトムは鍵盤から作り出されていると思うのですね。一度ハマると抜けられなくなるかもしれませんが是非、プログレの世界へ訪れてみてくださいね!!